2025
08.17
素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

ガイド

泉佐野市に拠点を構える「株式会社ながた」。古くから水産業のまちとして栄えてきたこの地域で、同社は少し異色の取り組みを続けています。

それが、素材の甘みを最大限に引き出した「無添加干し芋」の製造です。

ふるさと納税の返礼品としても高評価を受け、全国に多くのファンを持つこの干し芋。そのやさしい甘さとしっとりとした食感の裏には、丁寧な仕事と素朴で誠実な想いがありました。

取材当日は、蒸し上がったさつまいもをスライスして干す作業の真っ最中。湯気の立ち込める中、手際よく動く姿が印象的でした。

はじまりは「やさしいおやつを作りたい」という想い

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

蒸しあがったさつまいもをトリミングをしている様子

― 干し芋づくりを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

「当社では水なす漬物を販売していますが、季節性があって販売できる期間が限定的で悩んでいたんです。そんな時、ちょうど友人の子どもがアトピーで悩んでいたこともあって、だったら自分たちで添加物のないおやつを作れたらと思ったんです」

― 製造のスタートは大変だったのでは?

「最初は機械も何もないところからのスタートで、どう蒸したら甘みが出るか、どのくらいの厚みがちょうどいいか…本当に試行錯誤の連続でした」

― 品種もいろいろ試されたそうですね。

「今は紅はるかをメインにしていますが、最初は本当にいろんな品種を試しました」

さつまいもは品種によって甘さや食感、水分量が大きく異なるといいます。試行錯誤の末、しっとりとした食感と強い甘みが特徴の「紅はるか」にたどり着きました。

「やっぱり紅はるかは蒸したときの甘みが違いますね。干し芋にしたときに、あのねっとりとした食感になるのが魅力です。甘みがしっかりしていて、しっとり・もっちり仕上がるので、うちの干し芋と相性が良いんです」

さつまいもの仕入れも、味の良さだけでなく安定した品質を重視しているそうです。

素材の選定はもちろん、仕入れ先にも妥協はありません。安定した品質のさつまいもを仕入れるため、信頼できる農家さんから直接仕入れることもあるそうです。

工程ごとにこだわりを。美味しさの鍵は「蒸し」と「トリミング」

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

ひとつひとつ丁寧にトリミングしています

干し芋の製造は、蒸す・カットする・干すというシンプルな工程に見えますが、実は細かな調整の積み重ね。

― 製造工程のなかで特に大切にしていることは何ですか?

「トリミングが一番大事かもしれません。さつまいもの根や繊維が多い部分を取り除くことで、仕上がりの見た目も味も格段に良くなります」

「根の部分や硬い筋が残っていると、せっかくのしっとりした食感が台無しになってしまいます。お客様が食べたときに違和感がないように、一つひとつ確認しながら作業しています」

その後は、中までしっかり火を通しながら、甘みを引き出すために蒸し時間を調整。干し芋特有のしっとり、もっちりとした食感を実現するため、1枚1枚手作業でスライスして並べていきます。

― 天候によっても調整するそうですね。

「そうなんです。湿度が高い日は少し長めに干したり、逆に乾燥している日は途中で切り上げたり。その時々で微調整することが多いですね。」

まるで“芋の声を聞くように”仕上げるその様子からは、丁寧なものづくりへの姿勢が伝わってきました。

リピーター多数。「ふるさと納税がきっかけで知ってもらえた」

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

トリミング後にカットを終えたさつまいも

― ふるさと納税に出品してから変化はありましたか?

「『また寄附しました』とか『このもっちり感が忘れられなかった』とか、お客さまからいただく声がすごく励みになりますね」

中には、干し芋をきっかけに実際に店舗を訪れてくれる方も。全国の寄附者とつながる新しいきっかけになっているようです。

― お客様の声で特に印象的だったものはありますか?

「どこか、“当たり前にそこにある存在”として、この干し芋を日常の楽しみにしてくださっている方がいたんです。『子どもと分け合って食べてます』とか『おじいちゃんが楽しみにしてるんですよ』なんて声をいただくと、本当にうれしくなります」

― どんな方に食べてもらいたいですか?

「小さなお子さんにも、年配の方にも、誰にでも安心して食べてもらえるおやつを作っているつもりです。無添加で自然の甘みだけで勝負しているので、素材の良さが伝わると嬉しいですね」

保存料や着色料を使っていないという点が、小さなお子さんを持つ家庭やアレルギーのある方からも安心して選ばれる理由になっているそうです。

目指すのは「誰でも食べられる当たり前のおやつ」。将来はカフェ展開も?

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

― 干し芋を通じて目指していることはありますか?

「昔ながらのおやつって、なんか安心しますよね。素朴だけど、飽きない味。うちの干し芋も、そんな存在になれたらと思っています」

ただ美味しさを追求するだけではない、暮らしに寄り添うものづくりへの想いが伝わってきます。

近年は健康志向の高まりもあり、「無添加」「砂糖不使用」といった点に魅力を感じて選ぶ人も増えているといいます。

また、現在は製造から販売までを手がけていますが、今後の展望について尋ねると、こんな夢を話してくれました。

― 今後やってみたいことはありますか?

「いずれはカフェのような形で、気軽に干し芋やスイートポテトを楽しめる場を作れたらと思っています。その前に、まずはこの干し芋をもっと多くの人に知ってもらいたいですね」

地域の人がふらりと立ち寄れるような、あたたかみのある店舗。それは、単に“売る場”ではなく、“干し芋を通じて人とつながる場”にしたいという想いから生まれた構想です。

― アレンジレシピも人気だそうですね。

「クリームチーズと混ぜてディップにしたり、トースターで軽く炙ってバターをのせるだけでもすごく美味しいんですよ。お酒のおつまみにもなりますし、ちょっとした贈り物にも喜ばれます」

ふるさと納税を通じて認知を広げつつ、今後はオンライン販売の強化や、新商品の開発なども視野に入れているとのこと。

「大きな企業のように一気に拡大するのは難しいかもしれませんが、“顔の見えるものづくり”で、誠実に届けていきたいですね」

素朴であたたかい味わいを届けたい ― 株式会社ながたの干し芋づくり

干し芋の製造を担当している日下様(左)・古川様(右)

編集後記

取材中、丁寧な手仕事や、干し芋にかける真摯な想いが随所に感じられました。 湯気の向こうで笑顔を見せながら作業するおふたりの姿が、とても印象的でした。

“誰が作っているのかが見える”、そんな安心感のある商品は、今の時代だからこそより価値を持つのかもしれません。

さつまいもの一片にまで気を配るその姿勢と、「また食べたい」と思ってもらえる商品をつくるためのこだわりに、取材陣も思わず引き込まれました。

ふるさと納税を通じて、この“やさしい甘さ”がさらに多くの人の暮らしに届くことを願っています。